七夕祭り第六話
七夕祭り 「とある運び屋と文化祭前夜」
続き物の短め文章、全七回更新
第一話 「運び屋青年と相棒カタツムリ」
第二話 「運び屋とカフェテリアのことりちゃん」
第三話 「運び屋と生徒会食堂の笹山さん」
第四話 「運び屋と家庭科部の木ノ下さん」
第五話 「運び屋と演劇部のマーくん」
とある運び屋と文化祭前夜・6 「運び屋と整美委員会の柏先輩」

「よしキルシュ、帰るか」
さっきもらったゲームソフトを無言で眺めていたジルは、おもむろにそう告げた
「む、マンガは諦めるのか?」
せっかく俺も乗り気になったのに! とキルシュは不満を訴えてペタペタとジルの耳をつついた
ちげーよ、とこちらもちょんちょんつつき返すと、触られるのを嫌がって少し頭を引っ込める
「これ、今までもらった物の中で一番高額だろ? 換金したらマンガの一冊くらい買えんじゃねーかな」
「成る程!」
引っ込んだ触角がにょこんっと生えた
確かにゲームソフトなら豆腐やエコバッグや開封済みの龍角散と違って買い取ってもらえるだろう、その金でマンガを買えば晴れて二人の目的は達成となる
正直なところ無理だと思っていたが、物々交換も案外うまく行くものだと、キルシュは機嫌良く触角を蠢かせた
そうと決まれば買ってくれそうな店探すぞ、とジルは腰に巻いた上着にゲームを突っ込み、さっきマー君が出ていった屋上広場の扉へ足を向けた
「そこのあんた!どいてぇっ!」
突如耳を刺す男の声、振り返るジルのこめかみをビッと空気を切り裂いて何かが通過した
幾条か切り飛ばされた赤錆色の髪、遅れて頬に感じる風圧、ジルは反射的に首筋を庇った
「おいキルシュ!無事か!」
飛んできた何かはギインッと音をたてて屋上の柵に当たり、柵の向こうへ撥ね飛んだ
「あ、ああ、当たらなかった」
「今の何だかわかるか?」
「金属のにおいがした、でも弾丸の類いじゃない、空気のあたり方からして直状の刃物だ」
「おいおい物騒だな、日本国地域は安全だと思ってたのによ!」
屋上広場には木も植えられる大きな花壇が作られている
ジルはすぐさま体を花壇より低く伏せ、背中を花壇に向けて背後を守った。首筋にくっついているキルシュは素早くポケットに隠す
ジルの作業着は防護耐火に優れた布で出来ているため、布一枚隔てるだけでも防刃効果は高い
ざっとあたりを伺うと、いた、向かい側校舎の屋根の上
斜度60度はありそうなそこで、二人の人間が激しく交戦している
一人は素早い身のこなしの体術で、もう一人は長い得物で応戦しているようだ
体術使いは投擲武器も使っているらしく、得物使いがたびたび攻撃を弾き返している、さっき飛んできた刃物は恐らくこれか
一方得物使いは首にヒレの様なものを巻き付けていて、得物を振るうたびヒレが軌道をなぞって線を描いた
四方からくる投擲武器を弾くため得物使いの動きが大振りになっている
その隙をつき、制空を破って体術使いが間合いを詰めた、構えた両腕の手甲に鉤爪がついている
左腕が相手に向かって閃く、が、その鉤は空を掻きとった、得物使いが過って足を滑らせ、立っていた屋根の頂点から落ちたのだ
いや違う、過って落ちたのではない、彼は屋根を滑って低くなった視界から体術使いの足を打ち払った
不意に低い位置からの攻撃をくらい、体術使いも屋根を転げ落ちる。その瞬間、得物の彼は首に巻いたヒレを解きほどいた
不安定な体制にも拘らず苛烈な速さで体術使いの頭をヒレで覆い、首の位置で一気に締めあげる
そして、耳も視界も遮られて暴れる相手に得物で腹にトドメの一撃をくれると、なんとそのまま屋根から校舎の中庭へ蹴り落としてしまった
「おいおいおいおい!」
ジルは思わず自分の警戒を解き、屋上の手すりに駆け寄って中庭の見える柵の向こうへ身を乗り出した
彼らのいた屋根から中庭へは七階相当の高さで二十メートル以上ある、落ちて無傷で済むはずがない
ジルの視界には石畳の中庭で赤い花を咲かせた無惨な人の姿が……
……―何て事はなく、数名の生徒が発泡スチロールのオブジェに色を塗っている様子が見えた
落ちた彼は一体どこに
「俺の勝ちだっ! ゆーさんっ!」
ジルたちの向こう側からそう叫ぶ男の声
つられて顔をあげると、得物使いが屋根に得物を突き刺して体を支えながら下を向いている
彼の真下には、右手に巻き付けた縄で辛うじてぶら下がっているさっきの体術使いがいた、あの状況から落ちずに持ちこたえたらしい、顔に巻かれた覆いは乱暴に破いて取り払ってある
「けっ、いつも逃げてるお前が調子乗んじゃねぇぞ! あほ! 不良生徒!」
「ゆーさんは仕事あんだろーがこの不良事務職! 梱包して粗大ごみに出すぞ!」
殺気だった戦闘を繰り広げていた二人が今度はぎゃんぎゃんと犬のケンカのような言い合いに発展した
とりあえず、洒落にならない事態は回避できたようで、ジルは安心する
たっぷり十分は口論したあと、気が済んだのか得物使いが屋根伝いにこちらに走ってきた
素晴らしい体感で屋根を駆けぬけ、数メートル飛んで危なげなく屋上へ着地する
右手に携えた得物は真っ黒な木刀だった、着ているのはこの学校の制服で、歳も背の高さもジルとそう変わらない様に見える、濃い茶色の髪が大分乱れて跳ね放題だ
「すいません、さっき打ち返し損ねちゃって」
怪我してません? そう訪ねてくる彼にケンカ中の刺々しさはない、が、よく見ると何故か腰に雑巾やハタキが装備されている、掃除が好きなんだろうか
「あれ? でもあんた、学校関係者じゃないな……まさか不法侵入じゃ……!」
「いやいやいやいや! 入館証あるから! 通りすがりの配達業者だから!」
相手が怪しげな者と見たとたん、剣呑な空気を醸し出す様子にジルは慌てて入館証を見せた
と同時に、一緒に突っ込んでいたゲームソフトが落ちる、プラスチックのケースがカラカラと音をたて二人の前に落ちた
「あ」
木刀の彼はゲームを視認すると目を丸くした、自ら拾うと 「これ、あなたのですか?」 と訪ねる
「それ? 演劇部の副部長に貰った、誰のものでもないのに演劇部の物に紛れてたからってさ」
「ああ、そんなところに……」
そう言って、何か心当たりでもあるのか、彼は「あのバカ」と誰かに向かって悪態をついた
そして少し言いにくそうにしつつも口を開く
「……あなたの貰ったこのゲーム、実は俺、探してて……」
「げっ、持ち主かよ!」
これは予想外だ、貰い物の持ち主が現れてしまった
彼はゲームケースを開けた、一番後ろのディスクを外したところに手書きの文字が描いてある
ジルには難しい字が使われていて読めなかったが「俺の名前じゃないですよ」と彼が言うので、おそらくこれは誰かの名前なんだろう
「正確には俺の友達のですけど、風紀検査の時にどっかに隠してそのまま行方不明だったんです。本人いわく「木を隠すなら森の中……」とか言ってたんですけど、どこにあるんだかさっぱりで」
「あー、それで演劇部のCDに紛れてたのか、良いよ良いよ、持ってきな」
持ち主が探しているものを無理に奪う気はない、ここは快くゲームを返してあげよう
だがジルたちにも都合がある、ここは何か代わりになるものを貰わなければ
ジルはゲームソフトを渡し、何かいいものを持っていたらくれないか、打診してみる
「え、俺、見ての通り整美委員会の担当掃除してる最中だったんで、ゴミ袋くらいしか……」
「いや、見ての通りって、さっき掃除そっちのけでバトってたじゃん」
「あの野郎は社会のゴミです、だからアレはゴミ掃除です」
「言い切りおった! てゆうかさっき首に巻いてたのもしかしてゴミ袋か!」
ほらこれ、と見せてくれたのは本当にゴミ袋だった、相手の顔を可燃物用ゴミ袋で絞めていたらしい、あとで燃やす気だったんだろうか
「ゴミ袋じゃあ……マンガは買えねぇな」
「マンガ? あんた一体何がしたいの?」
「かくかくしかじかだ!」
説明は割愛する
「物々交換でマンガが欲しいんですか……欲しいマンガのタイトルとか、わかります?」
「ああ、おつかいのメモ書きに書いてある」
ジルはスグルにもらったメモを渡した、ちょうどその時、屋上広場を望む場所にある窓が一つ開けられる
白いジャージを着た男子生徒が一人、窓から顔を出した
「あ! 柏! 見つけた!」
窓からあたりを見渡した生徒は、ジルの前にいる得物使いを確認すると、こちらに向かって声をかけてきた
“かしわ”というのは得物くんの名前だろうか、こちらの彼も 「あ」 とひと言発して視線をやる
「意気揚々と掃除ザボって何してんだよ! こちとら教室がスズランテープの海で静電気すごいんだぞ、お前がゴミ袋持ってるんだから勝手にどっか行くな!」
「もずく、喜べ、お前がどっか置き忘れたゲームこの人が見つけてくれたぞ」
「え、マジか! アザす!」
あれがゲームの持ち主か、白ジャージは窓からジルに向かって礼を言う。ジルもちょっと手をあげて挨拶を返した
得物使いこと柏くんは渡されたメモにさっと目を通すと、ふたたび白ジャージに向かって声を張る
「そんでもずく! ゲーム見っけてもらった礼に、この人にお前の後輩紹介して欲しいんだけど」
白ジャージは柏くんの言葉にきょとんと一拍置いた後 「良くわかんねーけど了解、ちょっと待ってろ」 と頭をひっこめて窓を閉めた、こちらにやってくるつもりのようだ
柏くんは持っていたゴミ袋一枚をつけてジルのメモを返す
「あいつと一緒に行ってみてください、あなたが探しているマンガ、手に入るかもしれません」
続く
次回最終話
エピローグをつけるので実質最終話は次の次
ゆーさんと柏
七夕戦争・3・4
柏ともずく
ハロウィンマンガまとめ
慣れない靴で二時間歩いたらマメが四つできました
指の火傷が治ったと思ったら今度は足か!
ままならねぇな! もう!
ハチャメチャな恋愛事情のそーの先に―
続き物の短め文章、全七回更新
第一話 「運び屋青年と相棒カタツムリ」
第二話 「運び屋とカフェテリアのことりちゃん」
第三話 「運び屋と生徒会食堂の笹山さん」
第四話 「運び屋と家庭科部の木ノ下さん」
第五話 「運び屋と演劇部のマーくん」
とある運び屋と文化祭前夜・6 「運び屋と整美委員会の柏先輩」

「よしキルシュ、帰るか」
さっきもらったゲームソフトを無言で眺めていたジルは、おもむろにそう告げた
「む、マンガは諦めるのか?」
せっかく俺も乗り気になったのに! とキルシュは不満を訴えてペタペタとジルの耳をつついた
ちげーよ、とこちらもちょんちょんつつき返すと、触られるのを嫌がって少し頭を引っ込める
「これ、今までもらった物の中で一番高額だろ? 換金したらマンガの一冊くらい買えんじゃねーかな」
「成る程!」
引っ込んだ触角がにょこんっと生えた
確かにゲームソフトなら豆腐やエコバッグや開封済みの龍角散と違って買い取ってもらえるだろう、その金でマンガを買えば晴れて二人の目的は達成となる
正直なところ無理だと思っていたが、物々交換も案外うまく行くものだと、キルシュは機嫌良く触角を蠢かせた
そうと決まれば買ってくれそうな店探すぞ、とジルは腰に巻いた上着にゲームを突っ込み、さっきマー君が出ていった屋上広場の扉へ足を向けた
「そこのあんた!どいてぇっ!」
突如耳を刺す男の声、振り返るジルのこめかみをビッと空気を切り裂いて何かが通過した
幾条か切り飛ばされた赤錆色の髪、遅れて頬に感じる風圧、ジルは反射的に首筋を庇った
「おいキルシュ!無事か!」
飛んできた何かはギインッと音をたてて屋上の柵に当たり、柵の向こうへ撥ね飛んだ
「あ、ああ、当たらなかった」
「今の何だかわかるか?」
「金属のにおいがした、でも弾丸の類いじゃない、空気のあたり方からして直状の刃物だ」
「おいおい物騒だな、日本国地域は安全だと思ってたのによ!」
屋上広場には木も植えられる大きな花壇が作られている
ジルはすぐさま体を花壇より低く伏せ、背中を花壇に向けて背後を守った。首筋にくっついているキルシュは素早くポケットに隠す
ジルの作業着は防護耐火に優れた布で出来ているため、布一枚隔てるだけでも防刃効果は高い
ざっとあたりを伺うと、いた、向かい側校舎の屋根の上
斜度60度はありそうなそこで、二人の人間が激しく交戦している
一人は素早い身のこなしの体術で、もう一人は長い得物で応戦しているようだ
体術使いは投擲武器も使っているらしく、得物使いがたびたび攻撃を弾き返している、さっき飛んできた刃物は恐らくこれか
一方得物使いは首にヒレの様なものを巻き付けていて、得物を振るうたびヒレが軌道をなぞって線を描いた
四方からくる投擲武器を弾くため得物使いの動きが大振りになっている
その隙をつき、制空を破って体術使いが間合いを詰めた、構えた両腕の手甲に鉤爪がついている
左腕が相手に向かって閃く、が、その鉤は空を掻きとった、得物使いが過って足を滑らせ、立っていた屋根の頂点から落ちたのだ
いや違う、過って落ちたのではない、彼は屋根を滑って低くなった視界から体術使いの足を打ち払った
不意に低い位置からの攻撃をくらい、体術使いも屋根を転げ落ちる。その瞬間、得物の彼は首に巻いたヒレを解きほどいた
不安定な体制にも拘らず苛烈な速さで体術使いの頭をヒレで覆い、首の位置で一気に締めあげる
そして、耳も視界も遮られて暴れる相手に得物で腹にトドメの一撃をくれると、なんとそのまま屋根から校舎の中庭へ蹴り落としてしまった
「おいおいおいおい!」
ジルは思わず自分の警戒を解き、屋上の手すりに駆け寄って中庭の見える柵の向こうへ身を乗り出した
彼らのいた屋根から中庭へは七階相当の高さで二十メートル以上ある、落ちて無傷で済むはずがない
ジルの視界には石畳の中庭で赤い花を咲かせた無惨な人の姿が……
……―何て事はなく、数名の生徒が発泡スチロールのオブジェに色を塗っている様子が見えた
落ちた彼は一体どこに
「俺の勝ちだっ! ゆーさんっ!」
ジルたちの向こう側からそう叫ぶ男の声
つられて顔をあげると、得物使いが屋根に得物を突き刺して体を支えながら下を向いている
彼の真下には、右手に巻き付けた縄で辛うじてぶら下がっているさっきの体術使いがいた、あの状況から落ちずに持ちこたえたらしい、顔に巻かれた覆いは乱暴に破いて取り払ってある
「けっ、いつも逃げてるお前が調子乗んじゃねぇぞ! あほ! 不良生徒!」
「ゆーさんは仕事あんだろーがこの不良事務職! 梱包して粗大ごみに出すぞ!」
殺気だった戦闘を繰り広げていた二人が今度はぎゃんぎゃんと犬のケンカのような言い合いに発展した
とりあえず、洒落にならない事態は回避できたようで、ジルは安心する
たっぷり十分は口論したあと、気が済んだのか得物使いが屋根伝いにこちらに走ってきた
素晴らしい体感で屋根を駆けぬけ、数メートル飛んで危なげなく屋上へ着地する
右手に携えた得物は真っ黒な木刀だった、着ているのはこの学校の制服で、歳も背の高さもジルとそう変わらない様に見える、濃い茶色の髪が大分乱れて跳ね放題だ
「すいません、さっき打ち返し損ねちゃって」
怪我してません? そう訪ねてくる彼にケンカ中の刺々しさはない、が、よく見ると何故か腰に雑巾やハタキが装備されている、掃除が好きなんだろうか
「あれ? でもあんた、学校関係者じゃないな……まさか不法侵入じゃ……!」
「いやいやいやいや! 入館証あるから! 通りすがりの配達業者だから!」
相手が怪しげな者と見たとたん、剣呑な空気を醸し出す様子にジルは慌てて入館証を見せた
と同時に、一緒に突っ込んでいたゲームソフトが落ちる、プラスチックのケースがカラカラと音をたて二人の前に落ちた
「あ」
木刀の彼はゲームを視認すると目を丸くした、自ら拾うと 「これ、あなたのですか?」 と訪ねる
「それ? 演劇部の副部長に貰った、誰のものでもないのに演劇部の物に紛れてたからってさ」
「ああ、そんなところに……」
そう言って、何か心当たりでもあるのか、彼は「あのバカ」と誰かに向かって悪態をついた
そして少し言いにくそうにしつつも口を開く
「……あなたの貰ったこのゲーム、実は俺、探してて……」
「げっ、持ち主かよ!」
これは予想外だ、貰い物の持ち主が現れてしまった
彼はゲームケースを開けた、一番後ろのディスクを外したところに手書きの文字が描いてある
ジルには難しい字が使われていて読めなかったが「俺の名前じゃないですよ」と彼が言うので、おそらくこれは誰かの名前なんだろう
「正確には俺の友達のですけど、風紀検査の時にどっかに隠してそのまま行方不明だったんです。本人いわく「木を隠すなら森の中……」とか言ってたんですけど、どこにあるんだかさっぱりで」
「あー、それで演劇部のCDに紛れてたのか、良いよ良いよ、持ってきな」
持ち主が探しているものを無理に奪う気はない、ここは快くゲームを返してあげよう
だがジルたちにも都合がある、ここは何か代わりになるものを貰わなければ
ジルはゲームソフトを渡し、何かいいものを持っていたらくれないか、打診してみる
「え、俺、見ての通り整美委員会の担当掃除してる最中だったんで、ゴミ袋くらいしか……」
「いや、見ての通りって、さっき掃除そっちのけでバトってたじゃん」
「あの野郎は社会のゴミです、だからアレはゴミ掃除です」
「言い切りおった! てゆうかさっき首に巻いてたのもしかしてゴミ袋か!」
ほらこれ、と見せてくれたのは本当にゴミ袋だった、相手の顔を可燃物用ゴミ袋で絞めていたらしい、あとで燃やす気だったんだろうか
「ゴミ袋じゃあ……マンガは買えねぇな」
「マンガ? あんた一体何がしたいの?」
「かくかくしかじかだ!」
説明は割愛する
「物々交換でマンガが欲しいんですか……欲しいマンガのタイトルとか、わかります?」
「ああ、おつかいのメモ書きに書いてある」
ジルはスグルにもらったメモを渡した、ちょうどその時、屋上広場を望む場所にある窓が一つ開けられる
白いジャージを着た男子生徒が一人、窓から顔を出した
「あ! 柏! 見つけた!」
窓からあたりを見渡した生徒は、ジルの前にいる得物使いを確認すると、こちらに向かって声をかけてきた
“かしわ”というのは得物くんの名前だろうか、こちらの彼も 「あ」 とひと言発して視線をやる
「意気揚々と掃除ザボって何してんだよ! こちとら教室がスズランテープの海で静電気すごいんだぞ、お前がゴミ袋持ってるんだから勝手にどっか行くな!」
「もずく、喜べ、お前がどっか置き忘れたゲームこの人が見つけてくれたぞ」
「え、マジか! アザす!」
あれがゲームの持ち主か、白ジャージは窓からジルに向かって礼を言う。ジルもちょっと手をあげて挨拶を返した
得物使いこと柏くんは渡されたメモにさっと目を通すと、ふたたび白ジャージに向かって声を張る
「そんでもずく! ゲーム見っけてもらった礼に、この人にお前の後輩紹介して欲しいんだけど」
白ジャージは柏くんの言葉にきょとんと一拍置いた後 「良くわかんねーけど了解、ちょっと待ってろ」 と頭をひっこめて窓を閉めた、こちらにやってくるつもりのようだ
柏くんは持っていたゴミ袋一枚をつけてジルのメモを返す
「あいつと一緒に行ってみてください、あなたが探しているマンガ、手に入るかもしれません」
続く
次回最終話
エピローグをつけるので実質最終話は次の次
ゆーさんと柏
七夕戦争・3・4
柏ともずく
ハロウィンマンガまとめ
慣れない靴で二時間歩いたらマメが四つできました
指の火傷が治ったと思ったら今度は足か!
ままならねぇな! もう!
ハチャメチャな恋愛事情のそーの先に―